食物の性質で、体をいかに温めるかを「熱・温・平・涼・寒」の5段階に分けています。

温熱性のものを食べると、内臓も温まり、代謝が活発になり、巡りもよくなります。
寒涼性のものを食べると、体内で発生した様々な炎症を抑え、血液の解毒作用や老廃物のデドックス作用もあります。
暑い夏には、体を冷やすトマト、きゅうり、スイカが取れて、寒い冬になると、体を温め、エネルギーを備える食材マグロ、鮭、ねぎなどが美味しくなります。

九州では馬刺し（涼性）を食べ、北海道では、ジンギスカン（温性）をよく食べるのも、その裏付けです。食材の性質を見極めれば、一年中、体を快適に保てます。

「酸・苦・甘・辛・鹹（塩）」は、食べ物がもつ本来の味の分類です。それぞれ体への働きがあります。

　酸味（例：レモン、梅）は、汗を止め、下痢や吐き気を止めるのに効果的です。つわりに苦しむ妊婦さんが本能的に酸っぱいものを欲しがるのも、そういった理由です。
苦味（例：苦瓜、緑茶）は、体内の熱をさまし、便秘、胃もたれを改善する；
甘味（例：さつまいも、もち米）は、体を滋養し、疲れ、虚弱体質の改善に効果的；
辛味（例：ねぎ、しそ）は、体を温め、巡りを良くする；
鹹味（例：昆布、いか）は老廃物の排出を促し、便秘の改善にも役に立つ。

　五味は、料理を美味しくするだけでなく、うまく使いこなせることで、体の不調も整えてくれます。

「肝・心・脾・肺・腎」の五臓に対して、食物がそれぞれ作用しやすい臓腑があります。

例えば、トマトが一番作用するのは「心」ですが、トマトが収穫される夏には、心の働きが一番盛んになり、疲れやすくなります。

トマトには「ビタミンC」「葉酸」「カリウム」「リコピン」といった成分が豊富に含まれており、コレステロールを減らし、血液をサラサラにし、血圧を下げる効果があります。トマトを食べることで、多くの心臓疾患のリスクを軽減でき、まさに「トマトが赤くなれば、医者が青くなる」ですね。

具体的な栄養成分の分析ができないはるか昔に、トマトを食べると「心」に良いというのが、長年の経験で分かっていたのですね。そういった膨大な経験値の統計結果が、「薬膳」となりました。

薬膳では、季節が5つあります。というのは、四季に加え、「長夏」という日本の梅雨に当たる季節があり、「春、夏、長夏、秋、冬」になります。
それぞれの季節に、対応する食べ物の色や性質、味、臓腑があります。
春は、肝気が上りやすく、めまいやのぼせの症状が出やすい。酸味がこれらの症状を抑えられ、緑の山菜も良いとされます。
夏には、苦瓜を食べると、夏に疲れやすい心を助け、体温を下げます。
長夏（梅雨）の時は、胃腸の働きが悪く、黄色・甘味のハトムギを食べると、胃腸の働きをよくする上、むくみを取る効果もあります。
秋には、辛味・白色が良く、辛味（ねぎ、生姜、唐からし）の食材を適宜に摂取すると、風邪予防になります。白い蓮根や梨を食べると、秋の乾燥を嫌う肺を潤います。
冬は、鹹味で黒い海産物（わかめ、こんぶ、えび）を摂ると、冬に消耗しがちな腎臓を助けられます。